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おそらのうえで。

おそらのうえで。

*君との距離*



いつもの時間のいつもの電車。
気がつけばいつもそこに
君がいた。

*君との距離*

満員電車は嫌い。
だからいつも講義が終わると
急いで駅に向かって
電車に乗り込む。

人もまばらな電車。
ドア横に立ってゆっくり
外を眺めながら本を読むのは
悪くない。


いつからだったっけ。

いつもそこには
同じ女の子が座ってて
いつしか窓に映る彼女に
自然と目が向く。

どこの誰なのかは
知らないけど
乗ってくる駅と
降りる駅だけ知っている。

声をかけるとか
そんなこと考えたことないけど
ただ僕は窓にうつる君を
いつしか自然と
見てたんだ。



いつもの時間のいつもの電車。

窓にうつる君は
疲れた様子で眠っていた。

ぽっかりあいた
君の隣。
ゆらゆらゆれる君を見てたら
気がついたら僕
君の隣に座ってた。


大胆すぎてびっくりだけど
肩にかかる君の髪は
思ってたよりさらさらで
甘いシャンプーのにおい。
思っておよりも
君は小さくて。


君の降りる駅についても
おきる気配のない君を
起こす勇気も出なくて
そのまんま。

いつしか寄りかかった君の
ちょっとしたぬくもりが
なんだか心地良い。


僕の降りる駅の
ひとつ手前。


突然君が目を覚ます。


「ごめん、君の降りる駅
 過ぎたんだ」

とっさに口から出たのは
自分への言い聞かせにもにた
ただの言い訳で

「あまりにも気持ちよさそうだったから
 起こせなくって・・・」

突然のことに
当たり前ながら驚いてる君を
まっすぐ見ることが
出来なかった。

「ほんと、ごめんね?」

タイミングよく
電車は僕の降りる駅。

勢いよく
君の前に立ち上がり

「俺、ココだから。
 一人で…帰れるよね?」

僕の問いかけに
まんまるな目のまんま
うなずく君をみていると

「じゃ。また明日。」

なんだか自然と笑みがこぼれて
僕は君に手をふった。

ほんとは
心臓が飛び出そうなくらい
緊張したけど
気づかれないように
僕は足早に電車を降りる。


明日からきっと
何かが変わる。


そんな気がしてた。






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